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経過措置型医療法人は今後どのように取り扱われるのか?
経過措置の概要
旧医療法第56条では、定款若しくは寄附行為において解散時の残余財産の処分を定めることとなっていました。社団医療法人に対する旧モデル定款では「本社団法人が解散した場合の残余財産は、払込出資額に応じ分配するものとする」とされ、また、財団医療法人に適用される旧モデル寄附行為では、「本財団が解散した場合の残余財産は、理事会及び評議員会の議決を経て、かつ、◯◯県知事の認可を得て処分するものとする」となっていました。つまり、持分の定めのある社団医療法人については、出資者に対する残余財産の払戻請求権を、財団医療法人にあっては、理事会等による残余財産処分権を認めていたわけです。
しかし、第5次医療法改正で、医療法人解散時の残余財産処分について、「残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、国若しくは地方公共団体又は医療法人その他の医療を提供する者であって厚生労働省令で定めるもののうちから選定されるようにしなければならない」(医療法44①)とされました。この規定は、新医療法施行日以後設立される医療法人に適用され、結果として、施行日以後は財団医療法人か持分の定めのない社団医療法人しか設立することができなくなりました。
ただし、施行日以前に設立された医療法人については、改正医療法の附則で経過措置が講じられています。附則第10条(残余財産に関する経過措置)では、「改正医療法第44条第4項」は施行日以降に申請された医療法人の認可について適用し、施行日以前に申請された医療法人については適用しない旨及び解散時の残余財産処分を定款若しくは寄附行為に定めることを規定した「旧医療法第56条」については「当分の間」なおその効力を有する旨が規定されています。
以上のように、解散時の残余財産の帰属先について旧医療法第56条の規定の効力を認めた経過措置の適用を受ける医療法人のことを「経過措置型医療法人」といいます。
「当分の間とは」
残余財産の処分について経過措置を定めた「附則第10条第2項」では、旧医療法第56条の効力を「当分の間」認めることとしています。
附則の中では、「当分の間」を「当該医療法人が、施行日以後に、残余財産の帰属すべき者として、同項に規定する者を定めることを内容とする定款又は寄附行為の変更をした場合には、当該定款又は寄附行為の変更につき医療法第50条第1項の認可を受けるまでの間」としており、自主的に定款変更等するまでの間ということになりますが、いつまでに変更しなければならないという具体的な期限は定められていません。
新法適用法人が経過措置型医療法人に戻ることの可否
持分の定めのある社団医療法人(いわゆる「出資額限度法人」を含む)は、附則第10条第2項に規定される医療法人(経過措置型医療法人)に位置付けられ、当分の間、残余財産の帰属について旧医療法第56条の効力を有したまま存続が認められることとなりました。
これに対し、第5次医療法改正によって、平成19年4月1日以降に新たに医療法人の設立認可申請を行う場合、設立後の医療法人は、財団医療法人又は持分の定めのない社団医療法人に限られることとなりました。この新法適用法人の経過措置型医療法人への移行の可否については、「医療法人制度について(平成19年3月30日医政発第0330049号 厚生労働省医政局長通知)」の中で、移行できないことが明確になっています。
合併
医療法人間の合併は、医療法第57条に規定されており、社団医療法人は社団医療法人とのみ合併できるとされ、財団医療法人は財団医療法人とのみ合併することができるとされています。つまり、社団医療法人と財団医療法人間の合併はすることができません。
また、合併は、合併当事者法人のどちらかが存続し、一方が消滅する吸収合併と、合併当事者法人の双方が消滅し、新たに法人を設立する新設合併の2種類があります。いずれの場合でも、合併により消滅した医療法人の権利義務を承継します。その際、消滅法人が行っていた事業に関し、行政庁の認可その他の処分に基いて有する権利も承継されます。つまり、病院の開設許可も病床の利用申請も承継されることになります。
施行日以後の新設合併であっても、その親切医療法人は、それぞれの被合併法人が経過措置型医療法人である場合には、経過措置型医療法人を選択することが可能となります。